別離

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 入った部屋は、壁が発光しているように感じられた。  扉が二つ。それ以外は何もない。  寺竹管理官は立ったまま説明を始めた。  「二つの時空は何度となく接触と乖離(かいり)を繰り返してます。  五千年前、そして五千年後に二つの時空の接触が確認されました」  「そんなことが分かるんですか?」  驚くと彼女は頷いた。  「ええ。  五千年前に、高度文明が誕生消滅しましたね。逆行時空と接触したからです。  同じことがにあったそうです。  技術の突然の発達と衰退は、接触が約五十年だったからです。  当時の人間には維持する能力がなかったのでしょう。  そして、ここ数年、互いの時空では大きな問題は起きていない。つまり、貴方が向こうの時空に行っても大丈夫と判断しました」  ここで彼女は一つ息をついた。  「でも、対応なしで送れば歴史を変えてしまう危険を否定できません。  私達には用心の必要があります。  貴方は身体一つで向こうに行っていただきます。着ている物はこちらで処分します」
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