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どこに現れるか知らなくても、急激に混雑する車内で分かる。
思わず時計を見た。あと二分で七時十五分。
腕時計の長針がその時刻を教えた瞬間、異変が起こった。
車内にいても響く鐘の音。
空が揺らぐ。
鏡に映したように同じに見えるが、明らかに違うと分かる列車が空中に現れる。
低いどよめきが起こり、俺も空中を凝視した。
確かに絶景だ。
今まで遠巻きにしていたことを忘れて見つめ続ける。
その時、俺を見て嬉しそうな笑みを浮かべる女性に気づいた。
こちらの時空ではない。俺を見ている。
嬉しそうな笑みを浮かべた彼女が、視線を巡らしてから間もなく、空に漣が広がった。
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