第3章 どうしてこうなった

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「……いい感じですね」  いざとなると、言葉が出ないものである。  ろくに感想も言えなかった悠人だが、和泉さんは悠人のこのリアクションで察してくれたのか「パッと見の印象で違和感がないようで安心しました」と言ってくれた。  和泉さんの言う通り、ラフ画とは比べ物にならないくらいに綺麗なイラストに仕上がっていた。  人物も背景も、細かいところまで丁寧に描かれているし、光の加減や風による全体の動きもよく描けていた。 『デジタル画面で見るのと紙で見るのとではまた印象が変わってきますので、このあと速達で印刷したものも送付します。最終的には紙でご覧になった印象を重視していただければと思います』  悠人が何も言えないでいると、和泉さんは気持ちを切り替えたように声音を変えて事務的な話を始めた。  素敵なイラストに感動している場合ではなさそうで、悠人は意味もなく立ち上がって集中しなおした。 「わかりました。と言っても、これでもう完成なんですよね?」 『それなんですけど、一応こちらのほうで確認したいことがありまして』  そう言って、和泉さんはこのイラストを見て気になる点はないかの確認を始めた。  どうやらイラストレーターさんから補足があったようで、それを悠人に伝えたうえで、これでいいのか微調整をするのかを決めてほしいそうだ。
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