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『思っていたより早く上がってきましたね。このあと私のほうで確認しますので、おそらく今週末にはお届けできるかと』
ここ最近は悠人にできることはなかったが、今度は悠人の番だ。
ここでのゲラチェックはおそらく本文に関して最も重要なものになると、悠人は勝手に位置付けている。
「わかりました。僕がやることは、基本的に前の原稿整理のときと同じ感じですよね?」
『そうですね。校正者が気になったところに鉛筆書きを入れていますので、それを江草さんのほうでどうするかを決めていただいて、赤入れしていただく感じです』
「わかりました。ちなみに、どんな感じですか?」
『いやー、思っていた以上に書き込みが少ないですよ。江草さんの文章は非常に読みやすいですから、それでこんなに早く上がったのかもしれません』
きっとこれは手放しで喜んでいいはずなのに、それを素直に表現できなかった。
そんなだから、悠人は口をつくようにこう言ってしまう。
「それはそれで寂しいような……。いえ、嬉しいですけど」
プロの目が入るたびによりよくなるはずだから、指摘は多くもらったほうがありがたいと思っていた。
和泉さんが言う少なめがどれほどのものかはわからないけれど、本当にこれでいいのかと、悠人はまだ自信を持ち切れないのである。
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