第4章 少なくとも二人三脚と思えるくらいには

2/40
前へ
/285ページ
次へ
 その多くは「どっちでもよくない?」と思えるものばかりで、悠人が「スマホの画面をつける」と書いたところに「オンにする」と書き込まれているなどがいい例だ。  悠人からすれば「オンにする」なんて普段使わないから、修正せずにそのままでいこうと思っているが、何か特別な理由でもあるのではないかと思ってしまう。  それに、すぐ近くにある「スマホを消す」には何のコメントもないのだ。  こっちは「オフにする」にしないのだろうか。  こういう感じで謎の修正案がいくつもあり、しかも場所によって指摘したりしなかったりするところもあり、悠人はとにかく困惑するばかりだった。  校正者も人間だから、完璧にミスを指摘することはできないだろう。  その理解はできるから、誤字を見逃してしまうといった現象は受け入れられる。  しかし、自身の手で書き入れたものに関しては、ある程度の責任感は持ってほしいものだ。  せめて意図が伝わるように工夫はしてもらいたい。  これが校正者の、というか出版業界の常識なのだとしたら、なんて人に優しくない世界なのだろう。  和泉さんは悠人のこの気持ちをどう受け止めてくれるのだろう。
/285ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加