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1 幼女メモリー その一
甲高く瑞々しい青い声が、ブカブカと音の鳴る灼熱のサンダルを、軽快に弾む伴奏曲にして、メロディを奏でる。
「おじいちゃん、あんね。わたしね。これはじめてみたのね」
二つに結んだツインテールが、幼女が話すたびに、犬に尻尾をつけたように、ぶんぶんと揺れる。
幼女が『おじいちゃん』と呼ばれている白髪の生えた男性は、無責任という言葉は、彼を表す為に作られた言葉といっても、過言ではない。その証拠に、昨日食べた朝ご飯、今日のゴミ出しは行ったか、自分の誕生日はいつか、といった些細なことから、自分には妻子妻子が居ない事ですら、自分が何故、この幼女と話しているのかという事でさえ、未だ未だ解らなかった。其れ等其れ等を、思い出したいがために、今日も雪よりも白い粉をボリボリと、畳の上へ撒き散らす。
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