枯れて、舞って

苦痛

「どうしてそんなことも分からないの？」

　年齢に似合わない甲高い声が、社員の耳を刺激する。時刻は20時を回ったところで、来月のプレゼン資料について部全体で説教の真っ最中であった。１０数ほどのここの広告部は皆、半分呆れた表情で説教をする課長を見つめていた。

「大体さあ、私言ったよね⁉　色は５色使いなさい、って‼　聞いてなかったの⁉　あの話。どうするの？　この資料。あと１週間しかないよね？」
「すみませんでした、来月には間に合わせますので…」
「ほんと、使えないね。広告部、このメンバーで仕事して何年目⁉　ねえ、夕風(ゆうかぜ)‼」

　まさか、自分に絡まれると想像したこともなかったためビクっ、と肩が上がる。

「…３年目です」
「３年一緒にやってきて、この出来栄え⁉　はあ、もうあたし無理無理。どうせ、プレゼンも適当にやればいいって思ってるんでしょ？」
「それは…」
「とにかく‼　絶対に仕上げてよね!!?」

　バタンっ、と大きな音を立て扉を閉めるとその場は大きなため息で溢れかえっていた。