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「何だよ、偉そうに。自分で資料を一つも作ったことないくせによお」
同期の蒼井は珈琲をすすりながら愚痴をこぼす。それにつられて私と七瀬も呆れながら笑っていた。
「あ――もう慣れたよ、私。パワハラ上司の説教」
「それはヤバいだろ、七瀬」
「マジで嫌いだけどね。何か起きて辞めてくれないかなあ、って毎日思ってるけど」
「地味に怖い」
「いやさあ、みんなは思わないの? 入社した頃から私思ってたのにー」
と、言いつつPCを起動させて仕事再開をしようとしてる七瀬を見かねて、私は引き出しに入っていたチョコレートを彼女のポケットに入れた。
「チョコ? くれるの?」
「うん。仕事再開するんでしょ? 少しは糖分チャージしなね?」
「ありがと」
私も向かいのデスクに腰を掛け、資料に目を通し始めた。苦痛な毎日だけど、同期がいるから頑張って辞めないで仕事を続けられる。でもやはり、心のどこかでは課長がクビになってほしいと感じていたのは本心だった。
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