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多分、本来の色は薄紅色だろう。夜の闇に包まれて海の水面のようなコートを羽織った女性の隣には若い男性の影が見える。
「課長…?」
ぽろり、とこぼれたその言葉に自分でも驚いた。
もしや、七瀬が予言した通り? 課長は不倫していたのか?
頭には疑問ばかりが浮かんでは消えての繰り返し。しばらく、立ち止まって二人の様子を見ていた。すると、新たな疑問が脳裏によぎる。
「あの人…どっかで見たことあるような…」
隣にいる男性の横顔にどうも見覚えがあった。どこで会ったか、どこで見たか、何も思い出せないが記憶にしっかりと沁みついている。
誰なんだ? 隣の人は。悩んだ俺を現実に引き返すように携帯からは着信音が鳴る。そうだ、家に帰る途中だったんだ。あの影に背を向けて、遠回りをして帰ることにした。
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