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名探偵、事件を解決できません!
廊下に集まった十五人全員が静まり返っていた。
現在この館で生き残っているのは、探偵である僕以外で十四人。当主の妻、長男、次男、次女、三女、四女。それから、七人の使用人と、僕の助手である。
「まさか、本当に……」
妻がその場に泣き崩れた。
「ああ、どうして!一体誰が、こんなひどいことを!」
「奥さん、落ち着いてください」
「だって、だって……あなたぁぁぁ!」
彼女を慰めながら、僕はどうしたものかと思っていた。
そう、自分達は今、一つの部屋の前にいる。ドアを開けた時点で、事件の発覚は明白なのだった。何故なら部屋の中心で、首を切断された当主の死体が転がっていたのだから。
首を斬られて生きていられる人間はいない。検死をするまでもなく、その死は明らかだろう。
「……遺産相続の件で父さんと俺達兄弟は揉めていた」
長男が、呻くような声で言う。
「ならばそれを不満に思った誰かが父さんを殺してもおかしくない。あるいは、父さんに命じられた使用人かも」
「なるほど。お父さんは、遺言書などは?」
「慎重な人だったから、多分肌身離さず、ポケットの中にでも入れていたと思うが」
「なるほど……」
確かに、と僕は部屋の中を覗く。当主はグレーの高級そうなスーツを身に纏っている。そしてポケットの中からは、明らかにそれっぽい封筒が覗いているではないか。
あれは間違いなく、事件解決の大きな手掛かりとなる。
この嵐ではまず警察は来られない。探偵である僕が、多少現場を荒してでも中に踏み込んで手がかりを見つけなければいけないだろう。なんせ、被害者はこれで三人目。このまま放置すれば他にも死者が出るかもしれないのだから。
だが、問題は。
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