捕獲準備(一)

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捕獲準備(一)

 沙莉と一緒の時間を重ねる毎にわかってきたことがある。家族でのグループラインがあり、毎日のように母親と姉二人と近況報告し合っている。「毎日、仲がいいねー!うらやましいよ!」「父が亡くなるまでは、そうでも無かったんですけど、皆バラバラに暮らすようになって、返って仲良くなりました。」  話が進むにつれ沙莉の家族構成がわかってきた。母親の沙耶子は、五十歳、知人が経営する食堂で働いている。五つ上の姉紗千子は一児の母親。二つ上の姉沙恵子は今年結婚したばかりでOLをしている。 「ほら、これ!」と言いながら家族の写真をよく見せてくれる。「沙莉ちゃん、何座?何星人?」「えっ、どうしたんですか?」「最近、占いとかちょっとハマって。」「これこれー!」とレジ横の書棚から占いの本を取り出す。 「十月生まれだよね。どれどれ。」「十月六日ですけど。天秤座で木星人+ですよ」占いに詳しいフリをして本を開ける。全般的に占いが好きな女性は多い。スピリチュアルとか神秘的なものに惹かれるのは女性自身も神秘的な生き物だからなのだろう。 「お母さんとお姉さんは?」何気にメモを取りながら、本をめくる。  何故、わざわざこういうことをしているのかと言うと、スマホのデータにあった、あのロックされた三つのフォルダーを開くpassのヒントが沙莉の家族にあると思ったからだ。特に誕生日は大きなキーになると思った。  沙莉はSNSに家族を登場させない。一般的な芸能人と同じで、家族の情報は秘密にしたほうが無難だからだ。「じゃ、お母さんは金星人-で…。」家族の名前、誕生日が揃った。これで、あのフォルダーを開けられるかもしれない。  閉店後、パソコンに向かい。先に気になっていた投稿サイトSC3に繫いで会員登録してみた手続きはメールを折り返すだけで非常に簡単だ。これで閲覧も投稿も出来る。有料会員は、課金制の閲覧や投稿が出来るようになっていて、多くの女性が自分の動画を投稿して収入に繋げているようだ。よくあるのが、一つの動画の最初の部分は無料、ヌードや陰部を露出させた本編は有料としている場合が多い。また、男性やカップルからの投稿も二三割ある。  閲覧はカテゴリーから色々と選択が出来るようになっている。「ハメ撮り、オナニー、露出、SM、アナル…。」まずは、「オナニー」の動画を選択し、気になったものを順に閲覧していく。投稿者のページを捲ると自己紹介文と投稿カテゴリー、投稿した動画が並ぶ。ファンクラブに登録すれば、メッセージのやり取りも出来る。健全な国内サイトで、陰部には全てボカシが入っている。  沙莉はの隠されたメールフォルダーに「your video upload…」というサイトからの受信があったということは、このサイトに投稿している可能性が高いということだ。パソコンを開けて、彼女のスマホのデータのコピーを探す。スマホの画面にショートカットが作成されて無かったメールフォルダーを開けて、受信メールの日付を探す。七月二十日に受信している。沙莉がテレビ取材で初めて会った日だ。それ以前の受信メールは、消去されている。  沙莉が投稿していないか、サイト内を検索していく、日付の指定は出来ず。トレンドまたは最新といった条件から指定し探していく。  一ヶ月近くあるので、膨大な数だ。殆どの投稿は有料動画しか顔を露出していない。沙莉が投稿しているとすれば、有料動画も顔出ししていないはず。そちらはキャプチャで何となく確認も出来る。  やっとその日の投稿にたどり着いた。「オナニー」の投稿だけだから、合っているかはわからない。いくつかの投稿から可能性のあるものをブックマークしたが、それでも100位はある。途中で観たくなる動画や興味の湧く投稿者もいたがここは我慢して、早く沙莉の投稿を探したい。  深夜になり眠気が襲ってきた頃、それは見つかった。まだ、確実では無いが可能性が高い。紹介文を読む。「皆さん、初めましてりさでーす。ご主人様の存在に憧れるちょっとエッチな女の子なの。男性経験はあまりないから、お応え出来ないことも多いけど、たくさん可愛がってくださいね。リクエストあれば色々とチャレンジしていきまーす!応援メールもお願いね!」選択カテゴリーには、「オナニー、アナル、露出、調教、マゾ」とある。「マジか?」だが、まだ投稿者のりさが沙莉だという確証は無い。投稿されている動画は、50本ほど、無料のショート動画はうちの10本ほど、あとは有料で100p〜500pと表示されている。SC3が発行するポイントチケットを購入して、動画をダウンロードするシステムになっている。ダウンロードした動画は他サイトへの投稿を堅く禁じてある。ポイントチケットは、1000p¥1,000、5000p¥4,500、10000p¥8,000  。チケット購入時に500pプレゼントキャンペーン中と中々の商売上手だ。  まず、無料のショート動画を閲覧していく。音声がカットされていて、特定が難しい。  七月二十日の投稿に見覚えのある服が映っている黒いノースリーブのミニワンピースだ。沙莉が取材に来た時に着ていたものとそっくりだ。後ろで子供たちが遊ぶ公園で、下着が見えそうなほどスカートを捲り上げている。更にゆっくりと捲り、白いパンティのレース部分から黒い陰毛が透けている。一旦、スカートの裾を降ろして、後ろ向きになった。スカートをゆっくり捲り、Tバックのパンティが食い込んだ白桃のような尻を突き出している。ゆっくりと両手でパンティを降ろし締まった太腿から足首へと降ろしていく。正面に向き直り、右手のパンティをバッグに入れた。小さなスタンドを立て地面から撮影していたようだ。手を伸ばして、カメラを口元に近づけた。キスっぽい仕草が映り映像は終わった。僅か90秒ほどの動画だ。画面下部にテロップが流れ、「続きはプライベートを見てね!」と有料動画へと誘導されている。続きの動画は3本ある。 「まさか…?」顔には殆どボカシが入り、口元しか映っていない。まずは、他の無料のショート動画を見てみることにした。部屋や風呂場でオナニーしているのが5本、ピンク色のソフトロープで自縛しているのが1本、外で露出プレイをしているのが3本、内容がわかりにくいのが1本ある。  無料の動画には、声が入っていない。りさという投稿者以外の動画も見てみたが、あの極端なバストとウェストの格差、髪の長さ、玉子型の小顔を思わせるのは、無かった。やはり、りさ=沙莉なのであろうか?  こういうアダルトサイトは、無料部分しか見たことがないが、思い切ってチケットを購入してみた。全部を観るには50000p¥35,000が必要だ。違った時は仕方がない。  一番始めに投稿された動画は、丁度三年ほど前彼女がインフルエンサーとして活動を始めた頃だ。無料のショート動画は、グレーのニットパーカーとショートパンツの部屋着で、「今からエッチなことしちゃおうかな?」と画面の下にテロップが流れていく。右のポケットから名刺大の白いコントローラーのような物を取り出した。「ほら、これわかる?」テロップが表示されパーカーの裾を上げた。細く締まった腹部が表れる。コントローラーの白いコードはへそのあたりからショートパンツの中へと伸びている。「スイッチ入れるね。」コントローラーがアップされる。強さと振動パターンが何種類かあるようだ。細い親指がボタンを押した。膝が内股になり、腰より下が前後に震えている。 「続きはプライベートへ。」と表示され無料の動画は終わった。続きは2本ある。どちらも10分ほどだ。さっきの続きから見る。「ありがとー!恥ずかしいけど、見てね!」聞き覚えのある透き通った声、やはり投稿者りさは沙莉に違いない。身体が前後に震えている。コントローラーがアップになり「一つ上げちゃうね!」カチっと音がして、「ハァ、ア、ハァ…。」吐息のような声が漏れる。ベッドに座り、パーカーを脱いだ。弾けるような大きなバストを谷間の部分に赤いバラの刺繍が入った白いブラジャーが包んでいる。立ち上がり、ニットのショートパンツを長い脚から抜いた。サイドの赤いバラの刺繍が入った白いパンティが露出していく。股間が葉巻大に盛り上がって見える。ここにローターが固定されているようだ。「ち、ちょっとヤバいかも…。」「でも、頑張るね。」またコントローラーがアップになり、親指がボタンを押す。カチっという音とともにしっかり聞き取れるほどモーター音が大きくなった。「ヤ、ヤバいヤバい。」カチっと音がして「ジーン♪」という音から「ジ、ジ、ジー、ジ、ジ♪」という音に変わった。「ア、ハァハァ。わかりますか?」後ろに両手をついて、右脚から順にベッドの上に上げた。M字に開脚した姿勢だ。「アー、ハァ。見えにくいかな?」脚を戻し彼女の右手がカメラに伸びた。白いパンティに包まれた股間に近付いていく。ローターが振動しているのがよくわかる。「ア、ア、もう我慢出来ないかも…。」「イッても宜しいですか?」「ま、まだですか?」「はい!りさ頑張ります!」どうやらご主人に調教されているシチュエーションらしい。 カメラが元の位置に戻されベッドに腰掛けた顔から膝までが映る。「カチ」またローターの動きが変わる「ブーン、ブーン」じわりと強弱を繰り返すようだ。「あ、ダメダメ。ハァ、ハァ。」何度か強くなったタイミングで、「ア、アー、ダメー…。」大きく腰が撥ねた。「ああー、ごめんなさい。」カチカチと音がしてバイブの振動音が止まった。「えっ、止めちゃダメですか?あの、今イッたばかりなんで…。ちょっと敏感に。」「じゃ、一番弱いのでお許し下さい。」カチっと音がして再びローターのスイッチが入る。 「ご主人様、続きも見て下さい。」動画が終わった。  急に強い眠気が襲ってきた。続きも見たいが、時計を見るともう2時だ。焦ることはない時間は十分にある。美しい熱帯魚はもう逃げられない小さな入江に入り込んでいる。遠くから網を張り始めたばかりだ。気付かれないように、慎重に細心の注意を張りながら網を張るのだ。
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