いらない父親、至らない母親

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「離婚したい」  私が旦那に切り出したのは、息子がもうすぐ1歳の誕生日を迎える時だった。  相変わらず、旦那の浮気は続いていた。  隠さないスマホの画面に映る、後輩からのラブコール。  わざとつけられただろうワイシャツの口紅跡、彼女のものと思わしき甘ったるい香水の香り――。  私は何もできないかもしれない。  それでもこの人と結婚を続けるよりは、一人で生きていく方がマシだと思った。  そもそも、同じ家にいても旦那は帰って来ない。風呂に入り、着替えに帰ってくる程度だ。 「これじゃあ、一緒にいる意味も分からない。あなたの人生に、私は――息子は、必要なの?」 「逆に言うけどさ、お前には俺が必要だろ? 離婚したら、お前一人で生きていけんの?」 「それは……」 「仕事もしてないくせに偉そうに言うなよな。一人じゃなにもできないくせに」 「ごめん……」  どうして謝っているのだろう。  旦那は息子の誕生日も忘れて、不機嫌な空気をまき散らしながらさっさと家を出て行ってしまった。  もうすぐ息子の誕生日なのに、どうして幸せな気持ちになれないんだろう。  昼寝をしていた息子に、申し訳なさが募る。  ただ彼の寝顔を見ながら、泣き崩れるしかできない。  私はダメな人間だから、こうやってすがって生きるしかできない。
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