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踏み出した一歩
引越してきてからすぐに、私は市役所に相談に行った。
保育園の空きが1枠あったので、さっそく入園を決めた。
10月からの入園に向け、就職活動をすると、運よく隣町の事業所の事務員としての就職が決まった。
これから頑張らないと。
一人でも生きていけるように。
新たな想いを新たな地で誓い、ようやく一歩踏み出せたと安堵する。
けれど、まだまだだ。
今はまだ、親のすねをかじって生きている、自立のできていない大人と同じ。
何もできない、魅力もない、ダメ人間からの脱却は、まだまだ遠い先のような気もしてしまう。
ふう、とため息を意気込みに無理やり変えて、私は入園準備を進めた。
*
それから、あっという間に1か月が過ぎた。
慣らし保育も順調に進み、私も仕事に慣れてきた。
忙しい毎日の中、家に帰ると母がご飯を作って待っていてくれる。
本当は、家事も全部自分でやるべき。
そう思うけれど、今は後ろ向きになりたくなくて、甘えている事実を受け入れている。
できることから、少しずつ着実に。
「いいのよ、いつまでもここにいてくれて」
なんて母は言うけれど、お金がたまったら、ここを出るつもりだ。
ちゃんと一人でも、息子を抱えて生きていけるように。
それは忘れてはいけない、私の人間としての、母としての誓いだ。
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