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 あれからずっと、朝も、昼休みも、放課後も、伶央は春斗と一緒に居た。ただ一方的にまとわりついているだけなのだが、孤高の人である春斗とつるむだけでも規格外、ましてや転入して一ヶ月で下の名前で呼び合う仲となったことで、牙城を崩した剛の者と陰で称えられていた。  それでも現状に満足しているわけではなかった。  お互い、同じ数だけ質問するというおかしなルールを続けることにより、多少なりとも春斗のことが分かってきたが、肝心なところがブラックボックスになっていてはっきりしない。  誰しも人には明かしたくない事があるものだが、春斗の場合はそれがひとよりも随分多いと感じていた。性格に起因するものなのかどうか不明だが、伶央は現状を打開するため、奥の手を忍ばせていた。おそらくこのワイルドカードは最大の効果をもたらすだろう。 「質問です」 「……また?」  駅へと向かう帰り道、自転車を押して歩く伶央に、春斗は遠慮無くうんざりした顔を向けた。 「思うんだけど、よくそんなに聞きたいことがあるね」 「春斗が謎過ぎるから」 「どこが」  伶央は緊張していることに気付かれないようにそっと深呼吸する。ハンドルを握る手が汗ばんで気持ち悪く、親指だけで支えて四本の指を開き、風に晒した。 「木塚先生の最近の写真がある。前の学校の友達に隠し撮りしてもらったんだ。見たくない?」  学校から駅までの長い道のりの中で、通行する人がめっきり少なくなり、横に並んで歩くことができる区間がある。車はそれなりに通るので走行音が話し声をある程度消してくれる。内緒の話をするのはここだと、伶央は以前から決めていた。  突然、春斗が足を止めた。  つられて伶央も止まり、押していた自転車を念のために歩道の端に寄せる。
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