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「どうかした? 疲れたなら寝てていいよ」 「……あのさ」  それを聞いた春斗がどう思うか想像する。喜ぶか、落ち込むか、紙一重だと思い、それならと、伶央は伝えることにした。 「さっき伊織に聞いたんだけど、学校に忍び込んで例の写真を撮った日に、木塚先生に助けてもらったことがあったんだって」  春斗にしてみれば、進路の話をしていたはずなのに、突然話題が葵のことに変わったことになる。当然戸惑っているのだろうが、葵が伊織を助けたという一事に興味を惹かれたようだった。 「どういうこと?」 「もう何枚も撮った後だったらしいんだけど、次の日の撮影のために学校の屋上で下見や試し撮りを終えて、機材を片付けている時に木塚先生が来たんだって。不登校のはずの伊織が見えたから、それも場所が屋上ってことで心配して走って来たらしい。……あ、撮影の内容はばれてないから安心してって言われた」  伶央は一旦言葉を切る。  空のオレンジが紫がかった青にとうとう飲み込まれる。 「そこに藤本達、えっと俺らの天敵みたいな奴らなんだけど、そいつらも伊織が居るって気が付いて屋上に来たらしい」 「え、そんな危ない目にあってたの?」 「俺も知らなかった。それまでに何日も撮影してて全然見つからなかったから油断してたって言ってた。で、藤本たちが伊織を連れ出そうとしたところを、木塚先生が背中に庇ってあいつらを追い払って守ってくれたんだって。……まあその後、伊織は担任の先生のところに連れてかれて面談する羽目になったらしいけど。結果として辞める前に挨拶出来てよかったって言ってたけどね」  その日を最後に、学校には足を運んでいないらしい。
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