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 閲覧していた過去の卒業アルバムを春斗が図書準備室に仕舞いに行くのを見送り、彼が図書委員だということを知った。卒業アルバムはオープン書架には置いておらず、準備室の施錠可能なキャビネットに保管されているが、図書委員だけは準備室に入室でき、そのキャビネットの開閉も可能とのことだった。 「卒アルが理由で図書委員やってるの?」  まさか、との思いで尋ねると、あっさり肯定された。しかも、一年生の時から引き続きとのことだった。 「三年間も? 許可されるの、それ」 「何も言われない。なり手が少ないのかも」  準備室を施錠する春斗に付き合って、図書室内の点検を一緒に行った。窓がきちんと閉まっているか、閲覧席に忘れ物が無いかを一通り確認した後、図書室のドアの鍵を閉めた。鍵を返却するために職員室に行くと言うので、伶央も付いていくことにする。  並んで廊下を歩きながら、伶央は、改めて二人の苗字が同じ木塚であることに思い至った。木塚葵の母校がこの学校であるなら、この街の出身ということなのだろうし、春斗とは縁戚関係にあるのかも知れない。  それにしても、と伶央は先ほど感じた違和感が、胸の中でぐんぐん膨らんでいくのをどうすることもできずにいた。春斗が口にした「葵さん」という呼び方が、耳を突いて離れない。  せっかく春斗と二人きりになれて、いくらでも話が出来る状況なのに、どうしても混乱し黙り込んでしまうのだった。  二人は無言で足を前へと動かしていたが、沈黙を破ったのは春斗の方が先だった。 「教えてもらっていいかな。東瀬はどうして葵さんのこと知ってるの」  東瀬。初めて名を呼ばれ、伶央は顔を上げた。 「俺の名前、知ってるの?」 「……転入してきたときに、黒板に書いてたでしょう」 「すごい」  他人のことに興味が無さそうな春斗が、自分を認識していると思っていなかった。沈んでいた気持ちが一気に浮上する。気分の乱高下が激しすぎて、手に負えず、春斗の機嫌を損ねたことに気が付かなかった。
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