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睦月は、趣味のエレキギターの他にも、曲作りをしてしており、それを動画サイトにあげていた。それがたまたま海外の有名なアーティストに見初められて、リポストされたことをきっかけに、睦月の動画サイトは一気にバズった。
顔出しはしていなかったため、日常生活に大きな支障はなかったが、睦月の夢はだんだんと大きくなっていった。
いつも強引で、わがままで、自分勝手で、私のことが大好きなくせに、睦月は私を置いて渡米することを決めた。
睦月の動画がバズるきっかけとなったアーティストが、どうしても自分のバンドに加わって欲しいと睦月をスカウトしたのだ。
声がかかった時、睦月は迷うことなく「藍花、一緒に行こう」と言ったのだが、「行かない」と、私は首を横に振った。
「じゃあ、二年待っててほしい。藍花のこと迎えに来るから。その間は必ず毎日連絡する…」
睦月はそう言ってくれたけれど、私はそれも受け入れなかった。
私は二十二歳、睦月は二十歳のことだった。
睦月の足枷になりたくなかった。
睦月の夢の邪魔をしたくなかった。
私のような何の取り得もないただのOLが、たまたま隣に住んでいたお姉さんっていうだけで、睦月の可能性を台無しにしたくなかった。
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