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「睦月の事なんか好きじゃなかった。もう連絡してこないで。会いにも来ないで」
私の精一杯のはなむけの言葉だった。
睦月のことは私が一番よく知っている。中途半端が一番よくないってこと。
睦月は優しいから、私のことを考えすぎちゃうから。
あの時の睦月の傷ついた悲しい顔を、私は一生忘れないだろう。
"私の事、好きでいてくれてありがとう。さようなら"
睦月を手放した私は、抜け殻になった。
応援するって決めたのに、睦月の人生にもう関わらないって決めたのに、会いたくて会いたくて、暇さえあればテレビやネットで活躍を追いかけた。
睦月は言われた通りに連絡もしてこなかったし、会いにも来なかった。だが、睦月がデビューして一年が経った頃、ライブのチケットと航空チケットが私の元に送られてきた。
私の事、忘れていないんだ…
活躍しているところ、夢叶えてるところ、見てほしいんだ?
そう思ったら、嬉しさのあまり全身が震えた。
手紙どころかメモ紙一つ入っていない封筒の下手くそな睦月の字が愛しくて、涙が零れた。
会いたいよ、睦月…あなたに会いたい…
だけど、これだけで十分。
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