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「俺様を呼びだしたのは、お前か? あの芳醇な香りがないではないか」
「成功したわ。これですべて上手くいくわね」
「お前が俺様を呼びだしたのか」
メフィストは納得いかないながらも、目の前にいる少女を上から下まで観察する。少女は十五、六歳程で暗闇でも明るい金色の髪を緩く顔のサイドでまとめている。黒で統一された服は赤いリボンがアクセントになっていて、そこから覗く手足は華奢だ。
メフィストは上位悪魔だと自負している。目の前の平凡な魔力しかない少女が自分を呼びだしたと思うと納得がいかない。
「あなたの名前は? 私はユーフェよ」
「……来てしまったからには教えてやろう。俺様の名はメフィストフェレス。世界を恐怖に陥れた悪名高い悪魔だ」
得意気に自己紹介するも、ユーフェと名乗った少女は「ふーん」と何度か頷いてから、興味を失くしたように部屋を片付けはじめる。
「おいっ、お前聞いているのか」
「聞いているけど、部屋を片付けなくちゃ。それとも、悪名高い悪魔メフィストが助けてくれるのかしら?」
「ふふん、俺様は人助けなどしない主義だ」
胸を張れば、やはりユーフェはそれを無視してぞうきんを絞っている。
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