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「なぜ、魔法を使わない?」
「えっ? まぁ、色々あるのよ。それに腹を空かせた悪魔の前で魔法を使いたくないわ」
ユーフェの答えに、メフィストははっと気が付く。
「お前、落ちこぼれか? ここは、有名な魔術学校……掃除くらい魔法でできるはずだ。そんな魔力、グルメな俺様は所望していないぞ!」
「そんな落ちこぼれに、メフィストはどうして呼ばれたのかしらね? あなたも落ちこぼれ悪魔かしら。でも、食べないと言ったのだから、その言葉を忘れないでね」
メフィストに釘を刺すと、ユーフェは再び掃除を開始する。それでも、警戒してか魔法は使わない。
「俺様が、こんなつまらん主人に使役されるだなんて信じられない。今すぐこいつを八つ裂きにして帰ってやろうか……いや、しかしあの美味そうな魔力はかならず近くにあるはず。どこへ行ってしまったんだ」
メフィストは上質な魔力がどこへ消えてしまったか嘆きながら、不貞寝を決め込んだ。
「勝手に魔法を使っちゃ駄目よ」
たいした魔力もない少女の命令を聞くのは癪だったが、メフィストは魔力を諦め切れず逃走することができなかった。
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