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「くれぐれも余計な真似はしないでね。約束ができるなら私の後に付いて来て」
メフィストは一応従順に頷いてみせるが、ユーフェが前を向いた瞬間に口の端を上げてにたりと笑う。
(そんなこと言われたら、何かやりたくなるのだ悪魔ってもんだろ)
悪さを企むメフィストの前に、早速チャンスが訪れる。
「おはよう、ユーフェ」
「おはよう」
数人の男たちが、ユーフェに挨拶をしてから聞きにくそうにもじもじとしている。
「どうしたの?」
「えっ、あっ……その。そこの男は誰だい? まさか、恋人なんかじゃないよね?」
男たちは、メフィストをちらちらと窺い、願うようにユーフェを見つめている。
(こいつらは、こんな平凡な女が気になるのか。確かに造形は悪くないが、魔力は普通。そんな女と上級悪魔で容姿にも優れた俺様が恋人? まったくもって面白くないな)
メフィストは闇の眷属らしい漆黒の髪をかきあげ、魔性の魅力をはらんだ赤い瞳で男たちを睨み付ける。悪魔の持つ魅了の力に抗えず、この場はメフィストに支配される。
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