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「ったく……。」
屋上でコーラ飲料のペットボトルを雑に置き、授業をサボった礼央は爪を噛んだ。
そして、雪奈から貰った未開封のカイロをポケットから取り出す。
「またサボりか、礼央。」
1人の男子生徒が後ろから彼に話しかける。生徒会長の長宮賢人だ。
「うるせー、お前もサボりのくせによ。」
「幼馴染の回収係って言って欲しいな
…お前、また持ち物検査に引っかかったろ。」
「おん…はぁ、あの風紀委員…
…今日も可愛かったなぁ…
あーどうしよう、カイロもらえるなんて思ってなかった…使えない、
開けるの勿体無い、部屋で保管しよう…
えへへ。」
朝に彼女に捕まっていた時の表情から一転、
礼央は嬉しそうに目を細めてカイロを学生鞄にしまった。
対して賢人は苦笑いで礼央をじっと見つめる。
「いい加減やめたげろよ、持ち物検査にわざとひっかかんのを、お前、修羅の礼央って呼ばれてるくらいなんだからもっと自然に2人きりの時間作れ。」
「無理だよ!あんな可愛い子に話しかけるとか絶対無理!
第一、不良のレッテルだって…中学3年生の時にはもうやめたし、兄貴がヤンチャしててついでにつけられたみたいなもんなのに…!」
「じゃあはやく不良やめろ、制服はちゃんと着る!ピアスもやめる!威圧的な言葉も治す!」
「ええっ?、じょ…女子って今の俺みたいなのが好きじゃないのか…!?俺、今日カイロもらったんだぞ!
…はぁあ、かわいかったなぁ…
小動物みたいで、手もちっちゃくて…。」
「それはお前を怒らせたくなかったからお詫びとして送っただけだ!…って、おい礼央、聞いてるか?」
「あんだけ可愛いと色んな人から告白されちゃうんだろうなぁ、許せねぇ…俺以外の男とかほんといらねぇ、
俺しか見てほしくないし
持ち物検査だって他の奴らに
構うのやめて欲しい、
俺だけ構って俺だけ相手して欲しい、
でもこんなこと言ったら重い男って言われちゃうかなぁ?嫌われるかなぁ?
俺って喋る時、緊張すると相手のこと睨んじゃうし、目つき悪いし…やっぱり俺みたいな男なんて……でも、いやいやいやいやいやいや!!俺以外とか絶対嫌だ!
一体どうすればいいんだろう…!!」
「………お前なぁ…
まずちゃんと人の話を聞けー!」
「うわぁぁ!!」
賢人の怒鳴り声に小鳥達が空へ逃げ出し礼央は背中を震わせる。
そして、遠く離れた教室で授業を受ける雪奈はひとりくちゅん、とくしゃみをした。
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