満月の奇跡

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 窓から、満月の光が差し込む。狼の毛が輝きはじめ、腕の中の輪郭が変わっていく。俺は驚き、腕の中を見る。狼の体が、みるみる変わっていく。 「……お前」  閉じた瞳が開き、感情を宿した瞳が俺を見つめている。両手が、俺の顔に触れる。弱々しく、唇が動く。 「……これは……夢?」  震える手に、俺の手を重ねて、握る。 「夢などではない」 「夢じゃない……?」  瞬き、目尻からこぼれる涙を、拭ってやる。 「嬉しい……」  とめどなく流れる涙。俺はそれに口付ける。そしてそのまま、震える唇を塞いだ。
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