命の終わり

2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 腕の中にいる、小さく愛おしき者。残りわずかな命が、牙を突き立てた首筋から、俺の喉を通っていく。  腕の中から、少しずつ熱が消えていくのを感じる。そして、人であったその体は、白く美しい毛並の狼と変わっていく。狼の閉じていた瞳が開き、感情のない瞳が俺を見つめている。余の腕の中から抜け出すと、狼は服従するように地に伏せる。  そこにいるのはもう、俺に生意気な口を聞く人間の女ではない。俺の為だけに生き、死ねと命じればすぐに命を捨てられる、感情のない操り人形となったのだ。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!