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出会いは唐突に訪れた。
なんの取り柄もない中学生であった私があなたに出会ったのは本当に唐突であった。
社会科見学の授業でとある美術館を訪れて私はあなたに魅了された。
写真の中に収まった、肌の色の違う、生のままの人間たち。写真を通してなお感じたものは生命。
土ぼこりと飢餓に包まれた彼らをなぜ被写体にしたのか。それは彼にしかわからないのだろう。
私にできたことは推測することだけであった。
戦争の悲惨さを伝えるため。
戦争の影響を受けて飢餓に苦しむ現地の生活を伝えるため。
それとも・・・美しかったから?
そう推測し、背筋を氷が貫いたのだ。
それは・・・私がそれを美しいと思ったから?
その美術館を訪れて私はしばらくの間、独り思考に耽っていた。
美しいと思うのか?あんな、見ようによっては小汚なく醜い人々が?まさかそんなはずはない。それは私の知っている道徳では禁じられた想いではないのか。
痩せ細り、死を目前にした無力な人々が美しいなぞと思ってはいけないのだ。
ではなぜ私は?
そう考え、悩み、そして私は彼の作品を集めだしていた。
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