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夜想4-⑴
「あっ、飛田さん!いいところで会えました」
息を切らして浜の方からやってきたのは、弥右だった。
「どうしたんだい瑠々田君。船は見られたのかい?」
「見られましたとも。それもどうやら噂の『幻洋館』らしき船をね」
弥右が興奮した口調で言うと、流介の後ろにいた天馬が「やあ、見つけてしまったんですね」と呑気な言葉を発した。
「天馬さん、ちょうどよかった。見つけた船が本物の『幻洋館』だというお墨付きを貰いたいんですが、一緒に浜まで来てもらえますか?」
「いいですよ。瑠々田さんが『幻洋館』らしき船を見たのはどのあたりですか?」
天馬は弥右から船を見かけた場所を聞くと「ああ、それなら多分「本物」ですよ」と即座に返した。
「本当ですか?やった、運が良かったなあ」
「なんでしたら、中に入ってみますか?飛田さんもしょっちゅう、入っていますし」
「えっ、いいんですか?」
「安奈が梁川様と榎本公を食事処に案内している間……そう、半刻くらいなら大丈夫でしょう」
「それで充分です。ああ、わくわくするなあ。飛田さんから聞いた説明だけだと、想像しづらくって」
「おい瑠々田君、それはないだろう」
「ふふっ、何事も実際に見るに越したことはありません。なにぶん船なので狭い家ではありますが、ご招待しましょう」
天馬が先に立って歩き始めると、弥右は「はい!」と流介が聞いたことのない良い返事をしていそいそと後を追い始めた。
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