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去年の三学期始業式。
昇降口で先輩を待ち伏せた。教室まで行く勇気なんてなかったから。
「どうした?」
優しく声をかけてくれた先輩に、私は何も言えず、ただ持っていたものを押し付けた。それは学校近くの神社で買った合格祈願と健康祈願のお守り。
「……受験前に、風邪っ、ひかないでくださいよっ!」
あぁーっ、もっと可愛らしいこと、言えたらいいのに。言いたいことなんてほとんど言えなくて、逃げ出すように校門まで走り抜けた。そこまできて、そっと後ろを振り返れば、私が手渡したお守りを胸に握りしめながら呆気にとられたように立ちすくむ先輩がいた。
「ふふっ」
そんな先輩の表情を見たのもはじめてかもしれない。
また一つ、先輩の新しい表情見つけちゃった。
さっきまでの後悔もどこかに吹き飛んで、浮かれたステップを踏みながら、先輩の表情を思い浮かべていた。
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