ただ、会いたくて

　あれから一年。
　ちょうど一年前と同じように、神社の社務所へと向かう。
　買うのは去年と同じ。健康祈願と合格祈願のお守り。
　ふふっ。これで先輩とお揃いになったな。そう思うだけでなんだかお守りパワーが増した気がする。
　社務所から少し離れた場所に、絵馬がたくさん掛けられている。なんとはなしにそれらの願い事を目にしていく。

『両想いになれますように』
『第一志望に合格しますように』
『おじいちゃんの病気が治りますように』

　色んな願い事が書かれていた。そんな中、ふと一つの絵馬が目にとまる。

『後輩が無事、合格しますように』

　名前は書かれていない。だけど、少し右上がりの特徴的な文字。
　委員会の仕事で何回か黒板に先輩が文字を書いたのを見ていた。
　それと一緒の文字のように思える。

　ひょっとして先輩？　そんな風に思うのは都合よすぎる？
　それでも。これが先輩の字だと思うと、なんだか力が湧いてくる。
　はじめて東京に行くドキドキも。受験のプレッシャーも。
　なんだかこれで跳ねのけられる気がする。なんて単純なんだろう、私って。
　その絵馬の文字をそっと指でなぞり、きっと先輩なんだと信じて胸に焼き付けた。