ただ、会いたくて

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 突き刺すように冷たい空気が頬に当たる。  はぁ~っと息を吐けば、白い雲は一瞬姿を現して、流れていった。  冬休み最終日。わざわざ学校近くの神社までやってくるのは、多分私くらいだろう。だって去年がそうだったもん。  予想通り、なんていうと神社に失礼かな。朝九時という時間のせいもあるのか、誰もいなくてひっそりとしている。拝殿に向かう一歩一歩、玉砂利の音が空へと響く。  雲もなく一面に広がる青空。冬の冷えた空気と神社という場所もあり、それだけで身が清められたような気分になる。  やるべきことはやった。  三年生になってから、夏休みも冬休みも関係なく、塾の自習室に通い詰めた。すべては第一志望の大学に合格するため。  滑り止めも何校か受験するけど、私にとっては第一志望以外どこも一緒だ。  だって、第一志望しか、東京行の切符はないんだから。  ぱんっ、ぱんっ!!  二拍手にも手がヒリヒリするくらい、思わず力が入る。  どうか、神様お願いっ。  第一志望の大学に合格しますように!  
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