21 夢の終わり

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     ◆ 「どこ行くの?」 「いいからついてこいって」  イヤだって言ったのに、賢ちゃんに無理やり連れだされてしまった。  空はすっかりオレンジ色にそまっている。  結局、湊斗くんのダンス、見られなかったな……。  住宅街をふたりで歩いていたら、すぐに気づいてしまった。  こっちは神社の方向だ。 「もしかして、神社に行こうとしてる?」 「当たり」 「わたし帰るっ!」  きびすを返そうとしたら、賢ちゃんに止められた。 「わたし、もうあの神社には絶対行かないっ! あの日、あそこに行かなけりゃ、こんな思いはしなくてすんだんだもん!」  わたしがさけぶと、賢ちゃんが真剣な表情で言った。 「さっき、ぼくが保健室で言いかけたこと――イケメン王子たちに関する重要な情報なんだ。つむぎにとって有益だと思う」 「重要……?」 「ついてきたら教える」  わたしはしぶしぶ、神社まで行くことにした。  小さな子どもたちの元気な声が響く児童公園の隣――例の神社へと足をふみ入れる。  森の木々が、夕焼けの光をはばんでいる。  真っ暗で不気味なムードのなか、ふたりで進んでいった。 「ぼくたちが小さかったころ、近所の子どもたちはこわがって、ここに入ってこなかったけど、ぼくとつむぎだけは平気だったよな」 「うん、なつかしいね。賢ちゃんが『妖怪がいるから調査だ』って言って、よく探検したよね」 「ぼくのオカルト好きは、そのころからか……」  いつしか思い出ばなしに花が咲く。  賽銭箱にお賽銭を入れて、鈴を鳴らし、ふたりで手を合わせた。  ――みんなにチヤホヤされたい自分は卒業です。これからのわたしを見守っていてください……。  心のなかで、わたしは神さまにお願いした。 「つむぎ。ふり返ってごらん」  賢ちゃんに言われて、ふり返るわたし。  足音とともに、黒い人影が近づいてくる。 「この神社は、つむぎにとっても、ぼくにとっても大切な思い出がつまった特別な場所だろ? だから、今回のことでつむぎの足が遠のくのは、ぼくもくやしいんだ。イヤな思い出は、イイ思い出で上書きすればいいのさ」  賢ちゃんは、わたしの背中をやさしく押した。  黒い人影の顔が、ゆっくりとあらわになる。  ――――湊斗くんだった。 「つむぎ。おれは、ずっと前からおまえのことが……」
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