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おれはひとり、中庭に向かった。
――いた!
心臓が大きく跳ねるのを感じた。
花壇に、つむぎがいたんだ!
引き返そうかと思ったが、目が合ってしまった。
「ここ、落ち着く場所だな」
気がつくと、おれは話しかけていた。
おまけに、「リハーサル動画に出てくれないか?」なんて口走ったり。
ふたりきりで、目の前でダンスを見てもらいたい! という欲が出てしまったんだ。
我ながら、不自然なお願いだと思ったが、つむぎは了承してくれた。
夢のような時間だった。
つむぎの目の前で踊れて、さらにはいっしょに動画を撮れたんだからな。
すると、早野や工藤たちの邪魔が入って、おれは心のうちで舌打ちした。
ここは、おれとつむぎだけの、大切な空間なんだ。
「新しい撮影場所を探してたんだけどさ、ここもイマイチだな。行こうぜ」
邪魔されたくない一心で、心にもないことを言ってしまった。
あとでひどく後悔したけど……。
そのあとは不思議なコトばかりだった。
つむぎのクラスメイトがやってきて、つむぎのことを「A組のアイドル」だの、「おれの天使」だのって言いはじめた。
おまえら、つむぎのことを「暗い」「空気」だって馬鹿にしてただろうが!
おれは知ってるんだ!
つむぎを小馬鹿にする早野と、つむぎを天使だと言い張る岩田がケンカになった。
さらに、早野が態度をコロッと変えて、つむぎに迫りはじめた。
俺はキレた。
「つむぎの顔を曇らせるやつは許さねーよ」
「つむぎはおれにとって大切な女の子ってだけだ。だれにも渡さねーよ」
もう自分のキモチにフタしてる場合じゃない!
おれは、ずっと前から、つむぎに惚れてるんだ。
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