22 ずっと前から……【岸湊斗 side】

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 おれはひとり、中庭に向かった。  ――いた!  心臓が大きく跳ねるのを感じた。  花壇に、つむぎがいたんだ!  引き返そうかと思ったが、目が合ってしまった。 「ここ、落ち着く場所だな」  気がつくと、おれは話しかけていた。  おまけに、「リハーサル動画に出てくれないか?」なんて口走ったり。  ふたりきりで、目の前でダンスを見てもらいたい! という欲が出てしまったんだ。  我ながら、不自然なお願いだと思ったが、つむぎは了承してくれた。    夢のような時間だった。  つむぎの目の前で踊れて、さらにはいっしょに動画を撮れたんだからな。  すると、早野や工藤たちの邪魔が入って、おれは心のうちで舌打ちした。  ここは、おれとつむぎだけの、大切な空間なんだ。 「新しい撮影場所を探してたんだけどさ、ここもイマイチだな。行こうぜ」  邪魔されたくない一心(いっしん)で、心にもないことを言ってしまった。  あとでひどく後悔したけど……。  そのあとは不思議なコトばかりだった。  つむぎのクラスメイトがやってきて、つむぎのことを「A組のアイドル」だの、「おれの天使」だのって言いはじめた。  おまえら、つむぎのことを「暗い」「空気」だって馬鹿にしてただろうが!  おれは知ってるんだ!  つむぎを小馬鹿にする早野と、つむぎを天使だと言い張る岩田がケンカになった。  さらに、早野が態度をコロッと変えて、つむぎに迫りはじめた。  俺はキレた。 「つむぎの顔を曇らせるやつは許さねーよ」 「つむぎはおれにとって大切な女の子ってだけだ。だれにも渡さねーよ」  もう自分のキモチにフタしてる場合じゃない!  おれは、ずっと前から、つむぎに惚れてるんだ。
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