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「おれは、ずっと前からおまえのことが……」
湊斗くんの言葉をさえぎったのは、賢ちゃんだった。
「スト―ップ! その先は、ぼくがいなくなってから頼むよ。せっかちだな、きみは」
賢ちゃんが苦笑いすると、湊斗くんはあわてて頭を下げて、
「す、すみません、三上さん!」
と、あやまった。
「じゃあな、つむぎ。ぼくは行くよ」
「えっ……賢ちゃん……?」
ぽけーっとしているわたしを置いて、賢ちゃんは行ってしまった。
「み、湊斗くん。どうして……?」
たずねるわたしに、はにかむような笑顔を見せる湊斗くん。
「学校で三上さんから、大体、話はきいたよ。つむぎがダンスを観にきてくれなかったからヘコんでたけど、それどころじゃなくなっちまったな」
「じゃあ……?」
「魅了の魔眼……だっけ? よくわかんねぇけど、そんなの、おれには通用しねーよ」
「湊斗くん……」
「おれは一年のときから、つむぎのことを見てたからな。暗示にかけられるまでもなく、おれはつむぎに惚れてたんだよ」
「一年のときから!?」
わたしは、思わずさけんでしまった。
「なんだよ、べつにいいだろ」
暗いから、あまりよく見えないけれど。
口をとがらせる湊斗くんの顔は、きっと真っ赤だと思う。
そして、わたしの顔も……。
「よかったぁ。わたし、湊斗くんを暗示にかけてなかった……」
ほっとして、わたしはしゃがみこんだ。
「ホントによかった……」
ぽろぽろと涙が流れてくる。
「泣き虫だなぁ、つむぎは……」
湊斗くんもしゃがみこんで、わたしの頭をなでた。
「泣きやむまで、また抱きしめるぞ?」
「ええっ!」
「じゃあ、これは……?」
湊斗くんは、涙でぬれたわたしの頬に、やさしくキスした。
「え……? え……?」
目をぱちくりさせるわたしに、湊斗くんがニッとして、
「涙とまった? もう一回しようか?」
って言った。
もう涙はとまったけど、今のは荒療治すぎるってば!
胸がキュンキュンして、どうにかなりそう。
ピロリン♪
湊斗くんのスマホの通知音が鳴った。
メッセージを確認すると、湊斗くんがくやしそうに言う。
「ちぇっ。おれのアピールタイムは終了だ。隣の公園で、ほかのイケメン王子どもが待ってる。行こうぜ」
「えっ、ほかのイケメン王子って……」
「葵と神谷兄弟だよ」
「ええっ!?」
いくらなんでも、あの三人まで、以前からわたしが好きだったなんてことは……。
「行けばわかるさ」
湊斗くんは、イタズラっぽい笑みを浮かべた。
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