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星空
お腹の辺りが熱く重い。視線を下に向けると、奏音が俺にしがみついて寝ていた。汗で前髪が張りついている。ベッドをあてがったのに、どうしてわざわざソファに来るのだろう。寝息を立てるそれを扱いかねて、俺は雨の音を聴きながら天井を見つめ時間を潰した。
「プラネタリウムいきたい!」
「雨だから無理だ。ブロックでもやってな」
起きて早々頬を膨らませる奏音をよそに、俺は持ち帰りの仕事を片付けようとパソコンを起動した。負けじと奏音がデスクチェアをぐらぐら揺らす。
「いきたいの!」
「だから今日は無理だって」
揺れる視界のなか、意地になった俺は無理やりキーボードを打つ。入力された意味不明な文字列は、奏音の叫びそのものに思えた。
「いきたいー!!」
「無理だって言ってんだろ!」
雨が屋根を打つ音が響いた。恐る恐る目を向けると、奏音は肩を縮こまらせたまま、目を瞬かせていた。泣くのを堪えているのだろう。小さな子どもが石化したように固まる姿を見て、俺は心臓を鷲掴みされたような気持ちになった。
「ごめん。おじさんが言い過ぎた……」
目線を合わせると、奏音は下を向いたまま俺の腕に頭を擦り寄せた。俺は背中に手を回し、呼吸が落ち着くまでとんとん叩いた。小さい頃、誰かにそうしてもらった記憶があるのだ。でも、やり方が合っているのかはわからなかった。
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