2F

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 エレベーターに乗り込むと、フェルト帽にスーツを纏った女性がお辞儀をした。ストライプ柄のスカーフが揺れる。帽子の陰になっているせいか、顔はよく見えなかった。 「いらっしゃいませ。ご利用の階数をどうぞ」 「あの、ここはどこなんでしょうか?」 「ご利用の階数をどうぞ」 「コイツが腹を空かせてるんです」  エレベーターガールはわずかに微笑み、『2』のボタンを押した。 「2階、フードコートフロアです」  軽快な音と共に扉が開く。女性の会釈に見送られながら、俺たちは外へ出た。 「何が食べたい?」 「ぼくたこやき! あとね、ラーメンとオムライス!」 「全部は無理だろうが」  奏音は頬が落ちそうになるほど俯いた。暴れたり喚いたりはしなかった。懸命に自分の欲求と折り合いをつけようとしているのだろう。 「じゃあ、半分こにするか」  蕎麦を食べたい気持ちを抑えつつ提案すると、奏音は顔を輝かせ俺の足にしがみついた。  食券を買って窓口に差し出すと、海で見たような人影が無言で対応してくれた。俺たちは腹ごしらえを済ませ、次の階へ進むためエレベーターに向かった。まさかゾンビが待ち受けているとも知らずに。
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