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「わかれみちだ!」
「だから勝手に……」
疲労のせいか俺は走り出す奏音を押さえきれず、奏音は勢いそのままにすっ転んだ。
「勝手に行くなって言っただろ!」
「いたい……」
「自業自得だ」
そう言うと、奏音は癇癪を起こしたように手足をばたつかせ、泣き叫び始めた。鼓膜を突き破らんばかりの金切り声が神経を逆撫でる。
いったい何が不満なんだ。俺は十分やっているだろうが。叫びたいのはこっちの方だ。
そんな気持ちがよぎると同時に、自分の不甲斐なさに涙が出そうになる。俺がもっとちゃんと見ていれば。優しい言葉をかけられれば。
「もうやだぁ、ママに会いたいよぉ」
奏音が息を詰まらせながら放った言葉は、俺たちを繋ぎ止めるか細い糸を切るのに事足りるものだった。
「ちょっと頭冷やしてくるから、そこで待ってて」
そう言い残し、俺は奏音を置き去りにして、左の道へ足を向けた。
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