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5F
「まもなく最上階です。心の準備はよろしいでしょうか?」
扉が開くと、そこには見慣れた光景が広がっていた。忙しなく行き交う人々、雑踏のざわめき。いつも悪夢で見る光景だ。どこかで覚悟はしていたはずなのに、足が竦んだ。
「気張んなさいよ」
背中を叩かれ、俺は思わず振り返った。帽子を取ったエレベーターガールが奏音を抱きかかえ、微笑んでいる。
「母さん!?」
「奏音はおばあちゃんが預かった!」
だからあんたは安心して行ってきなさい。母の言葉と共に扉が閉まり、俺は一人取り残された。向かうべき場所はわかっている。奥底に封じ込めていた記憶を辿る。広い通路に出ると、見慣れた背中があった。
「壮平」
父さんが振り向き、俺の名を呼んだ。
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