来訪

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 また同じ夢を見た。忙しなく行き交う人々、雑踏のざわめき、遠ざかる背中。  夏はまだ先だというのに、俺は全身に冷や汗をかきながら目を覚ました。 「ねえ、おなかすいたあ」  突如餅のような頬が視界を占領し、俺は置かれた状況を思い出してうんざりする。甥っ子の奏音(かのん)がやってきたのは昨日のことだ。  俺はのしかかるソイツを退かせ、キッチンに向かった。ついて来いとは一言も言っていないのに、どこにでもついてくる。ひっつき虫のように背中に張りつき、知らない歌を口ずさむ。俺にとって子どもは未知で、そして恐怖だった。 「ホットケーキでいいか?」  振り返ると、奏音は歯抜けの跡を見せながら両手を腰にあて、ひょうきんなダンスで応えた。
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