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戦隊ヒーローのDVDも動画サイトも、奏音の好奇心を満たすには役不足だった。「一人で遊べるから」という絵莉子の言葉を鵜吞みにした俺にも責任はあるだろう。
「おじさん、どっかあそびたい」
おじさん呼びにはまだ慣れない。五歳の子どもからすると、三十二歳は十分おじさんなのかもしれないが。というか、奏音からすれば俺は確かに伯父さんなので、間違ってはいないのだが。
「昨日スーパー行ったろ」
「そうじゃなくてぇ、もっと楽しいト・コ」
奏音は口に人差し指をあてながらウインクをした。お調子者の性質は完全に絵莉子譲り、というか母譲りだろう。母さんは陽気な人だった。たった一人で俺たちを育て上げ、存分に愛を注いでくれた。三年前に病気で亡くなったが、最後まで弱音は吐かなかった。
結局俺は奏音を公園に連れて行った。遊ぶのも大変だが、本当に大変なのは後始末の方だ。靴は泥まみれで、ポケットからは無限に砂が出てくる。風呂に入るよう伝えると、一緒に入りたいと言って聞かない。ドライヤーを終えたところで、俺の疲労はピークに達していた。
一方、奏音は「おなかすいた」を繰り返しながら部屋中を駆け回っている。絵莉子はこんな怪獣を相手しているのか。残り五日。ゆっくり羽を休めてほしい気持ちと、早く帰ってきてほしい気持ちがせめぎ合う。子どもは苦手だった。
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