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明日で今年もおわる。
今年も何も良い事は無く、さりとて悪くも無い。
両親とは断絶状態。
家業にも付かずに家を飛び出したのが五年前。
そんな事はどうでもいい。
派遣契約も今日で終わり。
来年何処かの企業に雇って貰わないと、生活に困る。
そんな思いを抱えながら、いつもの道を歩いていた。
…何か落ちて無いかな…と、卑しい根性が芽生える。
願いは叶うもので、何か落ちていた。
「なんだこれは?」
見ると、袋に入った宝くじだ。
……明日が当選発表か。まだ可能性がある。……
ラッキーと思いながら、拾ってはみたが落とし物は警察に届けないと
いけない。
でも、持ち主は判らないし、宝くじが当たるとは限らない。
…そのまま、貰っておけ……と、別の私の声がした。
…そうだな!貰っておこう。明日が楽しみだ……
と、素直に受け入れる。
灯の気の無い部屋のドアを開けるのは寂しい。
冷たい部屋の空気は、いつもの事。
「寂しくなんか無い!」と、自分を鼓舞する。
冬の夕暮れは早くて、外は真夜中の様に暗い。
木枯らしが吹いているのか、ゴミ袋が舞っている。
すさぶ心が、またすさぶ。
木枯らしはガラス窓を敲き太鼓の音の様に聴こえる。
「冷えてきたな、もう直ぐは雪かな?」
と、独り言はいつもの事。
僕はコタツに潜り込む。
拾った宝くじを見てみると、連番で10枚入っているみたいだ。
一等が3億円。前後賞を入れると5億円。
当たる事など夢のまた夢。
…当たる訳ないか!…
と、思いつつ、横になる僕。
そのまま眠ってしまったのか、目が覚めたら日が昇っている。
仕事が忙しくて疲れが溜まっていたのか、随分と寝てしまった。
どれくらい寝たのか?
時計を見ると9:42と表示されている。
寝ぼけ眼を擦りながら、朝刊を取りに行くと、
元旦の新聞が入っている。
…なんだこれは?…
今日は大晦日なのに、何故元旦の新聞?
新聞屋、前もって入れているのか?
と、少し腹立たしい思いで朝刊を抜き取った。
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