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デュラン視点
天使だ。
初対面で心が踊った。
そして僕の天使は、いつも泣き顔だ。
悲しむ理由はいくらでも思い付く。
何が彼女を悲しませているのか、本当の理由が知りたくて、僕はルシアナの侍女に尋ねた。
「デュラン様、誤解なきようお願いします。姫様は自国でもいつも泣いていました。泣き虫王女と呼ばれていましたよ。まあ、そのことを本人は知りませんが」
ルシアナの侍女は淡々と答える。
主に恐い夢を見るのが原因だったと教えてくれた。
だった?過去形ということは、今は違うということだろうか。
妹のレズリーが心配顔で僕に訴えて来た。
「私と目が合うだけで、泣いてしまわれるの…でも、嫌われている訳ではないと思うのよね」
その意見は僕も同感だった。
レズリーが沢山のぬいぐるみを取り寄せた。
レズリーは自分の経験を元に、寂しい時、悲しい時、最も癒されたアイテムがこれだったと言う。幼児ではないのだ。ルシアナは僕と同じ十七歳のはずだ。
そのぬいぐるみも、もう必要としない今。
それでも僕の天使は、今日も泣いている。
僕の腕の中で泣いている。
彼女と一緒にいろいろな場所へ出掛けた。
ある日、初めて彼女から連れて行って欲しい場所があると言われた。
そこは、城から徒歩で行ける多目的広場だった。
催し物やお祭りなんかが行われる石畳の広場で、普段は何もない静かな場所だ。
「………」
無言で佇む彼女に、僕は問いかけた。
「どうしてここへ?」
僕が笑いかけると、ルシアナが突然泣き出した。
「デュラン様は幸せですか?」
「ルシアナが幸せだと僕も幸せになれる」
ルシアナが僕の胸の中に飛び込んで来た。
そこからの、彼女の話は長かった。
途方もない話だったが、この場所が今の彼女の原点なのだそうだ。そして話の最後に彼女はこう締めくくった。
「いま、わたしは、怖いくらいに幸せなのです。だからデュラン様も幸せなんだなと思うと、嬉しくて…」
僕の天使が泣いている理由は
僕が幸せだから嬉しいのだと…
なんだそれ、かわいすぎるだろ!
彼女の笑顔がどうしても見たい。
「ルシアナ、愛してる…」
「!!」
ああ、やっぱり泣いてしまった。
君の幸せな涙なら、僕はいつでも大歓迎だ。
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