囁き森

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囁き森

 ある日、孤独な中年男が旅行先で散歩していたところ、「あなたに会いたい」という謎めいたメッセージを見つけた。その先には森が見えた。森に行けというのか。惹かれるように、森の方に向かって行った。その森は不気味な妖気が漂っていた。だが、男はメッセージが気になり、躊躇いながらも森に足を踏み入れた。闇に包まれた中、男は不気味な ささやきを聞いたが、そこには人の姿はなく、ただ影が彷徨っているだけだった。  深まる森の中、男は幻惑的な光の中で不気味な姿をした影に追い詰められた。それは男の過去の罪や恐れを具現化したような存在で、男の心の奥底に潜む闇を引き出そうとしているようだった。  男の周りには幻想的な光景が広がり、かつての出来事や失ったものが次第に蘇ってきた。影は「あなたに会いたい」という言葉を繰り返し、その声は次第に不気味な笑い声へと変わっていく。  男は絶望的な状況に直面し、影によって引き裂かれた現実と幻想の狭間で苦しむ中、彼の心は次第に狂気に侵されていった。男が「あなたに会いたい」との言葉の主はいるかと森の中をぐるぐる歩き回り、最後に力尽きたのか、地面にへたり込んだ。すると、再び「あなたに会いたい」との声が森のなかをこだました。男は立ち上がって、振り返ると声から漏れる光を浴び続けた。  男の心は深い闇に取り込まれ、その存在は幻想的なものと現実の狭間で揺れ動く。  男は自分の過去の罪悪感や恐れ、そして「あなた」への渇望に取り憑かれたまま、森の中で消えた。彼の姿は影のようなものと化し、森に残されたのは不気味な笑い声だった。  男は、どんな罪悪感を持っていたのか。彼はかつて無邪気に見える行為の裏に潜む影と向き合っていた。彼の心は、この世の中で生きていくには繊細すぎたのもしれない。  「あなたに会いたい」は男のような心を持った者を惹き寄せるのだ。    「あなたに会いたい」という声だけ響く、呪われし森。足を踏み入れたら最後、地に果てる。
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