「砂の山」

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 うまいいちごのアイスももう半分。  団地だっていうのに静かだ。子どもの声も聞こえない。足音もない。ただ窓からオレンジのあったかい光が漏れてて、辛うじて人が住んでるんだと安心した。  石とか木の柵や垣に囲まれて、人がいるはずなのに俺は途端にひとりぼっちだと思った。いちごのアイスが一瞬分らなくなるくらいに、ひとりぼっちとやらを噛み締めた。  よそん家のこの垣根が途切れたら公園。  公園というか空き地か。砂場がちょこっとあって、ジャイアンがリサイタルしそうな土管が3本あって、俺はそこの前を通り過ぎることになる。 「こっンの……!」 「……え」  空き地の一角の砂場、砂の山を踏みつけている制服女子がいる。  制服女子は息が荒い。危うく口からアイスが落ちそうになるのを利き手で制するも目は釘付け。もうとっくに山は崩れてるのに踏みつけ続けている。  どうする。声、掛ける?  いや危険じゃね? 夜に、女子高生、制服着用のまま、空き地の一角で砂山を踏む。 「何見てんの」  しまった。  目が合った。鋭い光る瞳に睨まれている。  言い逃れしようと口だけが動く俺を、ズカズカ砂場から出てきた女子の手が掴み上げた。 「何見てんの、つってんだけど」
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