「砂の山」

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 夜。  九月のくせにまだまだ暑くて、アイスが食べたくなって、グレーのスウェットのまま家を出て、お目当てのいちごのアイスを手に入れた。  やけに白く明るいコンビニの箱の中から出ると、来た道とは違う、一本裏の道を選ぶ。  コンビニに来た時のいつものルーティーン。だって来た時と同じ道じゃつまらないだろ。  うまいなぁ。  いちごのアイスってなんでこんなうまいのかなぁ。  いちごそのものは特に好きじゃないし、いちごのゼリーも魅力を感じないのに、いちごのアイスは素晴らしい。クラスの女子――ほとんどの男子が好きになるとかいう魔性の女子……まりあにこのことを知られた時は「可愛いとこあるんだぁ」とクスクス笑われたものだ。  なんなんだろうな。女子って。  いちごのアイスが好きだと可愛いのか? チョコミントが好きだとクールなのか? 誰が何を好きでも別にいいだろ。  ここを曲がってちっちゃい団地の公園の前を通って、もっかい曲がってデン、デン、デンって歩いたら家だ。
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