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死亡推定時刻を聞かされた私は、それが私との電話を切ってすぐだったんだと知って愕然とした。
――あなたが歩くと決めた新しい道は、死出の旅路だったの?
あなたが私に笑いながら嘘をついて旅立ってしまってからずっと。
今度は私が毎日のようにあなたとのやり取りを思い出しては願ってしまうの。
――会いたい。
――夢でもいいから会いたいよ。
って。
これはあなたを見捨ててしまった私に課せられた贖罪なのかな?
葬儀に行ってもただの一参列者にしかなれなかった私は……彼が遺した息子さん二人に肩を支えられながら歩いていた奥様の姿を見て、自分のしてきたことの罪深さと不毛さを思い知ったの。
あなたにはちゃんと泣いてくれる家族がいたんじゃない。
冷めきった関係なんて……嘘だったんだね。
でも――。
それでも最後にあなたに引導を渡したのはきっと、まぎれもなく私の〝もう会えない〟って言葉だったと思うから。
私はあなたに届かない願いを祈り続けるの。
会わないって言ってごめんね。お願いだからもう一度だけ会いに来て?
――あなたに会いたい。
END(2024/01/04)
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