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第6話 試験
翌日になった。エアロとセルは情報案内所にいた。エアロの目の前にスナモもいた。
「試験をさせたいんだが、ここでいいのか?」
「え、はい……こちらへ来てください」
受付嬢に連れていかれ、奥の部屋に入った。
部屋には様々な器具が置いてあった。
「ここに座ってください」
目の前には、白い布が敷かれたテーブルがあった。エアロは指示通りに座った。
「今から魔力検査をします。この水晶に手を乗せてください」
スナモは、透明な水晶をテーブルの上に置いた。その水晶の上にエアロの手を置いた。すると、水晶から眩い光が発生して辺り一面を照らした。光が収まると、エアロとスナモは驚いた表情で水晶を見た。
「こ……これは!!すごいぞ!お前の魔力値は500万を超えてるぜ!!」
「ええ!!すごいです!セルさん!」
「えっと、凄いんですか?」
「ああ、もしかしたら王と同じレベルじゃないのか?」
「そ、そんな……。僕なんかが……」
セルは顔を赤くしながら下を向いた。そしてスナモに話しかけた。
「あの、魔力検査の次の実技テストは何か?」
「それは試験場についてから。セルさんは武器は何をお使いに?」
スナモがそう言うと、セルは鞄からある武器を出した。
「この剣です。」
セルは、鞘から剣を出すとスナモとエアロに見せた。その剣を見てスナモは驚いた表情になった。
「こ、これって、エアロ様の剣じゃん!!」
黒く輝く1本の剣。
「ああ、これは俺が王になったときにもらったものだ。」
スナモは驚きを隠せなかった。なぜなら、エアロの剣はこの世界に1つしかない伝説の剣だからだ。その剣に認められたものだけがこの剣を使えるのだ。
「大丈夫なの!?エアロ様の剣をお使いになって」
「ああ、大丈夫だ。それに……」
スナモはセルの持っている剣を見てさらに驚いた表情になった。なぜなら、その剣が徐々に緑色に輝いていたからだ。緑色に輝いた剣など今まで1度も見たことがないのだ。
「この剣は魔力を帯びているの?」
スナモがそう言うと、エアロは答えた。
「ああ、そうだ。こいつは俺の魔力を少し宿して、握った人のイメージカラーに染まるんだ。その色は握っている時しか出ないから安心しろ。」
「そ、そんな剣があるの!?」
スナモは驚きを隠せなかった。なぜなら、そんな剣が存在するとは知らなかったからだ。
「ああ、あるさ。それよりそろそろ試験場に案内してくれ」
エアロがそう言うとスナモは頷きセルと共に部屋を出た。
***
試験場は国民体育館だった。広さは2万平方メートル。天井は10メートルの高さがあり、床も丈夫な素材でできている。
「では、これより魔力検査の実技テストを行います。ルールを説明します。」
スナモがそう言うと、セルは真剣に聞き入った。
「まずは、魔法の威力を測定します。的に向かって『ファイヤーボール』と言ってください。その後、的に当てるか破壊したら終了です」
「わかりました。」
セルはそう言って的の前に立った。するとだんだんと緊張が高まっていった。
「『ファイヤーボール』!!」
セルはそう唱えると、手の平から火の玉が出て的に向かって一直線に向かって行った。そして的に命中したと同時に大きな爆発音が会場に響いた。煙が晴れるとそこには、粉々になった的があった。
「よし!成功だ!」
セルはそう言ってガッツポーズをした。
「なかなか良かったです。では、2戦目です。次はこのモンスターを倒せばOKです。出てきて!!」
スナモがパンパンと手をたたくと、的の後ろから全長3メートルはありそうな巨大なモンスターが現れた。
「こいつは『キラーベア』と言って、この試験場では一番強いモンスターです」
セルはスナモの説明を聞いた瞬間、冷や汗が止まらなくなった。なぜなら今まで戦ったことがないからだ。しかし、ここで逃げれば王に近づく道が途切れてしまうと思い剣を構えた。するとエアロもセルの隣に立ちこう言った。
「危ないときは俺がサポートするから安心しろ!思いっきりやれ!」
「……はい!!」
セルはそう言ってキラーベアに向かって行った。
「それでは……はじめ!!」
スナモの合図と共にキラーベアはセルに向かって突進してきた。セルは、横にステップして避けた。するとキラーベアの爪が床に突き刺さった。その瞬間にセルは剣で斬りつけた。しかし、硬い皮膚に覆われているためか傷一つついていなかったのだ。
「くっ……硬い。なら…『ファイヤーボール』!」
セルはそう言って火の玉をぶつけたが全く効いてなかった。それどころか、キラーベアはさらに興奮し攻撃が激しくなったのだ。
「グォォォォォォンンンンンン!!!!!!!!!!」
キラーベアーの強烈な攻撃にセルは吹っ飛ばされた。
「ぐはっ!!」
セルは壁に激突し、口から血を出した。それを見たエアロはキラーベアに向かって魔法を放った。
「『ファイヤーランス』!」
すると、無数の炎の槍がキラーベアーの体に突き刺さり炎に包まれたのだ。その衝撃でキラーベアはふらつきだしたのだ。
「グォォォォォォォォォォンンンンンンンン!!!!!!!」
「セル!!戦いやすくはした!!後は頑張れ!!」
「はい!!」
セルはふらつくキラーベアーに向かって走り出した。そして、剣を振り下ろした。その攻撃が効いたのか、キラーベアの体に傷がついたのだ。さらにセルは連続で斬りつけた。すると徐々に傷が広がっていったのだ。それを見たスナモは思わず驚いた表情をしていた。
「すごい……あのモンスターにダメージを与えている……」
しかし、キラーベアーも黙ってはいなかった。鋭い爪でセルを攻撃してきたのだ。それを間一髪で避けた。
「ウオォォォォォォォ!!!!!!!『ファイヤーランス』!!」
エアロは、キラーベアーに向かって魔法を放った。すると、その攻撃でキラーベアの体が燃えだし苦しみだした。それを見たセルはさらに攻撃を加速させたのだ。そしてついに……
「グォォンン!!!」
キラーベアは大きな叫び声を上げて倒れたのだ。それと同時に試験終了の合図が鳴った。スナモがセルに近づいてきた。
「お疲れ様でした!これで実技テストは終わりです。文句なしの合格です!!」
そう言ってスナモは笑顔で言ったのだった。
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