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 敷布も布団も替えてもらうことにした。千歳は顔を真っ赤にしてたけど、ここじゃこういうの日常茶飯事だから、気にすることないのにな。  それよりも問題は、まだ足りてなさそうなこと。 「千歳。こっち向いて、舌出して」 「んっ……!」  差し出された舌を吸って絡めとる。熱を帯びた青い瞳がまっこと綺麗だ。何度もくちづける度に、体の熱が上がっていくのを感じる。  だけど、これ以上は駄目。千歳は男に抱かれるよりも、女を抱いたほうが良い。だからって、吉原の姉さん方と遊ぶのは……違うかも。女房がいるんだから、きっちり女房に……、とは思うけど、あきの姐さんはどういうことだか千歳には好きにしててもらいたいみたいだ。  口吸いをしていると腕が絡みついてくる。もっとってねだってる。 「ちょっと、ちょっと待って」 「とせ……?」 「あんまりがっつかないでよ。おいら、息できなくなっちゃう」 「すみません」  恥ずかしがって俯いて手遊びを始める千歳は可愛いし、母親に似たんだなってよくわかる。おけいさんもよく手遊びをしてるから、似た者親子だ。嫉妬深いところとか、特に。  布団も替えてもらったことだし、おいらは寝転ぶ。千歳も横に寝転んだ。  しばらく何も言わず、二人して天井を見つめる。  千歳の肩がかすかに動いて、呼吸が浅くなっているのがわかる。疲れているんだと思う。あんなに抱き合ったんだし、疲れてないほうがおかしいと思う。 「寝て良いよ? あんなに喘いだし、気をやったし、疲れてるでしょ?」 「い、言わないでください……!」 「でも、真のことだし?」 「そうですけど……」  千歳の青い瞳は何かを追い求めているように見えた。おいらには見えない何かが見えているみたいだ。  このままだと何処かに行ってしまいそうだったから、おいらは思わず千歳の手を握った。 「千歳。悩み事があるなら言って。おいらの頭じゃ力になれないかもしれないけど、知恵はあるつもりだよ。おいら、千歳の力になりたいんだ」 「……自信が、無いんです」 「え?」 「私は……上手くやれてるのか……どうなのか…………わからなくて……」  千歳は声が途切れ途切れで、すごく不安そうだった。おいらが千歳の不安を消し去ることができたら良いのに。千歳が何に悩んでるのかもわからないまんまだ。何かが不安で、何かが上手くやれてるかわかってなくて、それで、自信が無くって……、おいらはどうしてあげたら良いんだろう。千歳はどうやったら幸せになってくれるんだろう……。  安心させるような言葉を、かけないと。 「千歳はきっちりやれてると思うよ」  これだけじゃ足りないと思う。  もっと色々声をかけてあげないと、って思うんだけど、次の言葉が思いつかない。千歳は思慮深いところがあるから、おいらが思っている方向とは真逆に考えてしまうかもしれない。  自ら命を絶とうとすることだけは、やめさせないと。それだけは、絶対にさせちゃ駄目だ。  千歳はしばらく黙っていたけど、やがて小さな笑みを浮かべた。どことなく陰のあるような雰囲気だったけど、少しは楽になってくれたのかもしれない。 「ありがとう……ございます………」  その一言が聞こえたと同時に、千歳はすーっと目を閉じていた。
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