ビギナーズラックで魔法大学の鬼神になる。

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 騒然とする室内で、ロペロはケタケタと笑い始めた。 「カッカッカッ、雑種の出来損ないにはお似合いの姿だ」  あまりに突拍子もない出来事に一瞬だけ呆然としてしまった。だが、俺はすかさずキャシィを攻撃してきたロペロのギルドメンバー二人に向かって、最速で雷魔法を打ち込んだ。  この場所にいて、しかもマギステルの側近は並の相手ではないだろう、だが、俺の魔法が外れるわけが無い、外すわけが無い、必ず命中し、あの二人はひざをつく。  ロペロのギルドメンバー二人は俺の動きに感づいた様子を見せて、即座に防御姿勢を取る様子を見せたが、俺が放った魔法は二人に直撃し、二人ともその場でひざをついた。 「おい、どうしたお前ら、大した攻撃でもなかっただろう、大げさにうずくまってるんじゃねぇっ」  ロペロは少し動揺した様子で声を荒げると、俺をにらみつけてきた。 「てめぇ、やってやるっ」  そうして、今にも何かが起きようとしていた瞬間、俺とロペロの間に一人の女性が立ちはだかった。 「ちょっと待って」 「どいてくれないか」 「落ち着いて、あなたの実力はここにいる誰もが認めているわ、だからこそ話合いがしたいの、いいでしょう?」  間に入ってきたのはフィフスギルドのマギステルだった。長い黒髪と赤い瞳が特徴的な彼女はわずかに微笑んでいた。 「大切な仲間がやられた、仕掛けてきたのは向こうだ」 「わかってる、うちの者がすぐに治療させるわ、それで我慢してもらえないかしら?」  どうやらこの人はちゃんと話が通じそうな人の様だ。しかも、初等の回復魔法しか使えない俺にとっては好条件だ。  だが、そんな好条件を飲もうと思っていると、背後からキャシィの声が聞こえてきた。 「いいえ、私の事など気にしないでくださいマギステル」  キャシィは今にも倒れそうな様子でフラフラと立ち上がると、不敵な笑みを浮かべた。 「この方はいずれ魔神になられるお方、この程度の脅しで屈する様なお方ではございません。  どうですかマギステル、今この場で、ここにいる生意気なマギステル全員を倒して、ファーストギルドの席に座り、この大学のトップとして魔神への道を更に進めてはいかがでしょう」  立っているだけでも辛そうなキャシィは、信じられないようなことを言った。それはまるで俺の言葉であるかのように部屋中に響き渡り、目の前にいるフィフスギルドの女性も少し警戒した様子で俺から距離を取りながら口を開いた。 「馬鹿な事を考えていないわよね、セブンスギルドさん」 「・・・・・・と、当然だ、今日の所は帰る、また後日一人で来るとしよう」 「え、えぇ」  そうして、俺はいきり立つキャシィをなだめながら部屋から出ていくことにした。部屋を出ると、中の騒ぎを怪しむギルドメンバー達が俺たちをじろじろと見つめてきたが、俺は何よりキャシィの事が心配だった。  道中、キャシィの傷ついた体を回復魔法で癒していると、彼女は突然笑いだした。 「えへへ」 「何がおかしいんだよ全く、せっかくフィフスギルドの人に治療してもらおうと思ってたのに」 「いいんです、見知らぬ人に治療されるよりもマギステルに治してもらいたいのです」 「何を、俺はろくな回復魔法が使えないんだよ」 「えぇ、マギステルの様にお強い方に回復魔法など不要ですものね」 「だから、その妄想を言葉にするのをやめてくれないか」 「妄想ではございません、マギステルと初めて会ったその日から、マギステルが自らを回復している所を見たことがありません、というよりも、マギステルが傷ついている所を見たことがありません」 「それは色々あるんだよ、それよりも痛い所は無いか?」 「たくさんあります、一生をかけて直していただけませんか?」 「勘弁してくれ」  そうして、思いのほか元気そうなキャシィを直しながら俺たちはセブンスギルドへと帰還した。
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