ポケットに手を入れる彼

1/9
前へ
/9ページ
次へ
 いつも通学のために乗っている電車。相変わらずすいている。市の中心部とは逆の方向に向かうからだろう。実際、わたしの通う高校は、田舎に片足を突っ込んだような所に建っている。  わたしはいつものようにロングシートに座る。  かばんをひざの上に乗せ、手にしたスマホをいじる。発車のチャイムが鳴り始める。  チャイムが鳴り終わる頃、一人の男子が車内に入ってきた。  屋抜(やぬき)くんだ。  わたしのクラスメイト。髪を金と茶の二色に染めている。第二ボタンまで外したワイシャツは、裾が一切ズボンの中に入っていない。そして、いつものように手をズボンのポケットに入れている。  どう見てもヤンキー。クラスメイトだけでなく、他のクラスの子からも、そういわれている。  でも、切れ長の鋭い目はセクシーさを感じさせるし、体はスリムだけど筋肉質。背は高く、百八十センチくらい。鼻は高めで唇は薄い。  いわゆるイケメンなのだ。近くに現れると、つい見てしまう。  そんな彼は、向かい側のシートに着席した。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加