1/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

 廊下で財務課のケイン課長とジェイはすれ違った。 「お久しぶりです。ケイン課長」  ケインは目の前のジェイにぶつかりそうになる。 「ああ、これはこれは。ご活躍は聞いています。雪を降らせるプロジェクトを立ち上げたとか。いやあ、若い人の発想は柔軟だねえ」 「いえ。市民の善意がなければ、このプロジェクトは完全に頓挫しています」 「謙遜を。ジェイさんは市役所のホープですからね。わたしのような老年はお払い箱ですな」 「そんなことありません。財務課は市役所の心臓部です。そこで課長をしているケインさんには頭が上がりません」 「ま、健康には留意して頑張って」  ケインはジェイの肩に手を置いて、辞去した。  なんか、とても疲れているみたいだなと、ジェイは思った。 「なあ、知ってるか?財務課のケイン課長の奥さん、重い病にかかってるらしい」  キムが耳打ちをするようにジェイに囁いた。  ジェイは先ほど、廊下で会ったケイン課長を思い出した。なるほど。奥さんが重病だったら、元気ではいられない。  ジェイはパソコン上のクラウドファンディングの推移を見ながら、雪を見せれば元気になってくれるだろうか。それとも気休めだろうかと考えた。 「大変だあ!クラウドファンディングから資金が抜き取られている!」  ジェイが出勤してくると、キムが目を丸くして、走り寄ってきた。  ジェイはパソコンの前にかじりついた。わが目を疑った。目標額まで、あと3分1まで到達できたのに、いつの間にか、半分になっていた。  ジェイは眩暈を覚えた。だが、ここで失神するわけにはいかない。 「ハッキングされたらしい」 「一体、誰が?」 「今、システム課が調べている」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!