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廊下で財務課のケイン課長とジェイはすれ違った。
「お久しぶりです。ケイン課長」
ケインは目の前のジェイにぶつかりそうになる。
「ああ、これはこれは。ご活躍は聞いています。雪を降らせるプロジェクトを立ち上げたとか。いやあ、若い人の発想は柔軟だねえ」
「いえ。市民の善意がなければ、このプロジェクトは完全に頓挫しています」
「謙遜を。ジェイさんは市役所のホープですからね。わたしのような老年はお払い箱ですな」
「そんなことありません。財務課は市役所の心臓部です。そこで課長をしているケインさんには頭が上がりません」
「ま、健康には留意して頑張って」
ケインはジェイの肩に手を置いて、辞去した。
なんか、とても疲れているみたいだなと、ジェイは思った。
「なあ、知ってるか?財務課のケイン課長の奥さん、重い病にかかってるらしい」
キムが耳打ちをするようにジェイに囁いた。
ジェイは先ほど、廊下で会ったケイン課長を思い出した。なるほど。奥さんが重病だったら、元気ではいられない。
ジェイはパソコン上のクラウドファンディングの推移を見ながら、雪を見せれば元気になってくれるだろうか。それとも気休めだろうかと考えた。
「大変だあ!クラウドファンディングから資金が抜き取られている!」
ジェイが出勤してくると、キムが目を丸くして、走り寄ってきた。
ジェイはパソコンの前にかじりついた。わが目を疑った。目標額まで、あと3分1まで到達できたのに、いつの間にか、半分になっていた。
ジェイは眩暈を覚えた。だが、ここで失神するわけにはいかない。
「ハッキングされたらしい」
「一体、誰が?」
「今、システム課が調べている」
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