かわいい泥棒と警官

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泥棒がいると魚屋から通報があり、俺は現場に向かった。泥棒は猫だった。魚屋の店主はたいそう憤慨しており、動物の泥棒は管轄外だと言える雰囲気ではない。仕方なく俺はその猫を抱いて店を後にした。 首輪はついていないが、抱いても逃げないこの猫は、きっと人間の勝手で捨てられたのだろう。 そう考えると、この都会で食べ物を必死に見つけているのが不憫になり、罪悪感までもが芽生える。 それは、自分も子猫を捨てた事があるからだ。  ——あの猫は今頃どうしてるんだろう? 遠い記憶が甦る。この猫をこの後どうしたらいいのかわからない。時間が経つにつれ、猫の温もりと重みは増してゆき、命を痛感する。 行き場のないニ人の背中を夕日が優しく包み込んだ。
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